OKASHINAKUNのブログ

ドラマ感想と、日常と、時々ボクシング

古畑任三郎『今、蘇る死』

ブログ移転後初の記事は、「古畑任三郎『今、蘇る死』」です。

もう地上波で放送されてかなりの年月が経ちますが、今なお記憶に強烈に残っている衝撃

そして今でも見直してしまう数少ないドラマ
その中でも、秀逸なエピソードがこのお話です。

基本的には、「犯人は誰なのか」を視聴者にわからせておいて古畑任三郎がそれを追い詰めるのが古畑任三郎のお決まりパターンなんですが、このエピソードにはとんでもない思い掛けないカラクリがあったんです。

殺人を犯した犯人の背後にさらに黒幕が・・・
しかもその犯人は黒幕に操られている事に気付く事も無いままに殺人を犯してしまい、その犯人は自らの命を絶つ・・・
黒幕が自分で手を汚す事無く成し上げたまさに完全犯罪。

 

■あらすじ

忌まわしい因縁がある鬼切村。

鬼切村の名家・堀部家では、15年前に当主・幾三が謎の失踪、そして今、幾三の義弟で現当主の伍平が熊に襲われ死亡する。甥に当たる幾三の長男・大吉(千葉哲也さん)が社長に就任し、副社長には弟である音弥(藤原竜也さん)が昇格することになった。だが、大吉は社長になった途端、工場の裏山を売却し、レジャーランドにする計画を発表。このリゾート開発に否定的だった音弥は大吉と対立することに。そんなある日、音弥は、恩師である郷土資料館館長・天馬恭介(石坂浩二さん)に資料の整理を依頼され、小学生の頃に書いた自由研究ノートを発見する ― テーマは「完全犯罪」。音弥はノートに書かれたトリックを実行して大吉を殺害する。

 

■第二の事件

やがて物語は進み、私たちの予想とは裏腹に音弥は案外早々に追い詰められる。そして音弥の不可解な死。古畑は容疑者の死という「すべて閣下の仕業」の黛閣下(松本幸四郎さん)と同様の結末を嘆く。このあたりは、たしかにFINALらしい切なさが感じられる。だが、まだ放映時間は充分残っているのである。

 

■黒幕

黒幕は天馬先生です。

彼は教え子が大勢いるため警察にも影響力を持っており、自身に嫌疑がかかる前は古畑を捜査から外させるという発言をしていた。

言われてみれば、犯行直前に天馬先生が話を引き延ばしたのは一瞬不自然に思ったのだけれど、これ幸いと安堵している音弥の何とも言えない表情に引き込まれ、また、石坂浩二さんの話ぶりがキャラクター設定的に実にナチュラルであったがゆえか、その不自然さはあっさり拭い去られ、疑念は長く続かなかった。
いや、無論、単に私の注意力が足らなかっただけかもしれない。だが、そもそもこのドラマが犯人を最初に明かしておく手法であって、実際その原則通りに音弥が単独で犯行に及んだシーンを私たちは事前に観ている以上、今までと同じく彼が(単独の)犯人であることを私たちは当然の前提として受け止めている。しかも、音弥 が嬉々として巧妙な犯罪を実行する様子が、無邪気なだけに余計怪しく不気味に映り、堀部音弥という人物はものすごい天才的犯罪者であるかのごとき印象を私たちに与え、「究極の完全犯罪」という放映前の触れ込みと相まって、古畑がこの音弥という難敵をどう追い詰めるか、という一点に視聴者の興味を集中させるには充分であった。
また、石坂浩二さんはこのドラマでは通常なら当然犯人役であるはずであり、その意味で怪しんでしかるべきともいえる。しかし「すべて閣下の仕業」では、やはり大御所である津川雅彦さんが犯人ではない役で出ていたという”実績”がある。そのため、今回の天馬先生も単に謎解きのプロセスに関わる人物であって、犯人以外に大物を起用できるSPならではの贅沢なキャスティングなのだろうと思い込んでしまったということもある。

古畑は、天馬が音弥を巧みに操った筋書きを見事に解き明かした。しかし、天馬は何も手を下してはいない。ノートの文字を書き換えることが殺人の実行行為にあたるというには無理がある。間接正犯や殺人教唆ですら成立はかなり厳しいといわざるをえない。これぞ「究極の完全犯罪」。石坂浩二さんを起用した意味はまさにここに存在したのであった。ところが古畑は天馬の過去の罪状を暴き出す。大逆転である。

 

■天馬の過去の罪状

天馬の過去の罪とは、15年前に大吉・音弥の父・堀部幾三を殺害した事件です。

天馬『計画的犯行ではなかったからね、口論の上の所謂発作的殺人だ。が、あの男がどうしても山を売るって聞かなかったからだ。

大吉・音弥の父殺害の事件は突発的な犯行だったため証拠隠滅をほとんど行っておらず、15年前の事件を暴かれて逮捕された。
これほど完璧な犯罪を私は知らない・・・・。それでも犯人は・・・捕まる
何とも憎い台詞ではないか。俳優陣の演技といい、「究極の完全犯罪」の仕組みといい、しかし古畑が最後には勝利するという結末といい、まさにFINALにふさわしい秀逸な一作であった。

この完璧なトリックすら全て見破ってしまう古畑任三郎

ここまで強烈なインパクトと三谷幸喜氏の才能を感じさせたのは、このエピソード以外には無いです!
まさに秀逸なエピソードです。