OKASHINAKUNのブログ

ドラマ感想と、日常と、時々ボクシング

相棒12 #3「原因菌」

<ネタバレあらすじ>

新宿の歩道橋を歩く甲斐(成宮寛貴)。
その目の前で、1人の女性が腹部の痛みを訴え倒れ込む。
女性を助け起こした甲斐は救急車を呼ぶことに。

一方、バスの中でも、横断歩道でも、果てはオフィスや家庭でも同様のケースが起こっていた。

助けた女性に連れ添い病院へ訪れた甲斐。
目の前では似たような患者が運び込まれていた。
女性が彼女の娘・ハルカを呼ぶ声を聞いた甲斐はハルカを病院に連れて来る。

この騒動は早速、報道された。
右京(水谷豊)や角田はこの状況にただならぬ雰囲気を感じるが……。

運び込まれた被害者は221名。
どうやら、都内で10店舗を展開するイタリア料理店「アプリティーボ」というレストランチェーンで食事をした人々のようだ。
捜査一課では食中毒事件と判断し、保健所と生活環境課の合同捜査となった。
こちらには生活環境課の水倉が捜査に乗り出した。
甲斐も成り行きから、こちらの捜査に加わることに。

そんな騒動の最中、食品卸売商社「マルトクフーズ」社員・岡谷望(澤山薫)の他殺体が発見される。
どうやら、別の場所で殺害され運ばれたようだ。
これに興味を持った右京。
鑑識の米沢(六角精児)によれば、望の遺体の首には特徴的な傷があるらしい。
頭を殴打した時に、倒れて付いたようだが何による傷なのか。
さらに、岡谷の靴底から食用油と樹脂が検出されていた。

原因菌の検査をするべく「アプリティーボ」にて大規模な調査が行われていた。
これに立ち会っていた甲斐は、そこで何かを探す右京とばったり遭遇する。
岡谷の担当先が「アプリティーボ」だったのだ。
此処に食中毒事件と岡谷殺害事件が合流したのである。

伊丹たちは岡谷殺害について「マルトクフーズ」の上司を訪ていた。
上司によれば、岡谷は夜7時過ぎに退社したらしい。
だが、自宅に戻った形跡はない。
岡谷は殺害される前に何処に居たのか?

その頃、「アプリティーボ お台場店」では右京と甲斐がこれまでの経緯について情報を共有していた。
それにより「アプリティーボ お台場店」と「東、西品川店」だけが2年の間、保健所の定期検査を受けていなかったことが判明。

これについて、港南保健所の増井に問う右京たち。
なんでも、調査自体に協力して貰えなかったことと、もう1つ理由があるらしい。
客席の多さに比較し調理器具が少ないことを指摘する右京。
まさにこれが理由であった。
「アプリティーボ」の厨房では、食品加工会社から届く加工済みの食材を出来る限り並べるだけに留めていたのである。
より重要と思われる食品加工会社側の検査を行うに留まった側面もあったのだ。
増井によれば、加工を行うのは「ミヤ食品加工」という会社であった。

「ミヤ食品加工」の円社長(赤塚真人)を訪問した右京。
円によると「アプリティーボ」の料理に使う材料は「マルトクフーズ」から仕入れており、担当は岡谷だったそうだ。
説明を受ける右京だが、スープやソースを作る「スープトップ」という機械に興味を示す。
さらに、保健所の定期検査も増井の言葉通りにきちんと受けているらしい。

同じ頃、「アプリティーボ」の阿部社長に事情聴取を行う伊丹たち。
保健所の定期検査に協力しなかった理由を問われるが「時間が合わなかっただけだ」と繰り返す阿部。
其処へ生活環境課の水倉が飛び込んで来る。
水倉は伊丹の捜査が相手に情報を与えるだけだと非難。
伊丹と水倉はそりが合わず、その場で衝突してしまう……。

樹脂と食用油の出所を追う右京。
樹脂については不明だが、食用油が「アプリティーボ」で使用されていたサラダ油だと判明。

保健所の検査結果が発表された。
結果はシロ。
少なくとも、調べた範囲内からは原因菌は検出されなかったそうだ。

これを増井から伝えられた阿部社長は大喜び。
偶然、立ち会っていた右京と甲斐は「患者が飲食してから一晩も経過しての検査に意味があるのか」と疑問を抱く。
これを指摘された増井は逆上、定期検査が行えなかったのは「アプリディーテ」側が非協力的だったからだと主張する。
この増井の言葉に阿部社長も応戦する。
「閉店後なら応じると何度も言った筈だ!!」
「深夜1時過ぎに保健所が検査出来るとでも?」
阿部社長と増井の論争は何処まで行っても平行線であった。

水倉がミヤ食品加工に目を付けた。
右京と甲斐はこれに同行することに。

「阿部社長の指定した食材以外は使用してませんよ」と語る円。
つまり、仕入れ先は「マルトクフーズ」からのみとなる。
円の話を聞いていた右京は、スープトップが消えていることに気付く。
円によれば、ウラカワ機械にメンテナンスに出したそうだが……。
ところが、記録を見ると24日に定期点検に出したところであった。
定期点検後にまたもメンテナンス?
眉根を寄せる右京だが……。

「ウラカワ機械」を訪問した右京。
社長の浦川によると、スープトップは彼の発案商品。
食材を切断しながら加熱する優れもので上海でも大変な人気らしい。
さらに、浦川社長によると円が言ったような不具合は無かったとのことだが。
スープトップを見ていた右京はその部品の1つに岡谷の例の傷と同じ物を見出す。
どうやら上海進出に余念がない様子の浦川を残しその場を去る右京たち。

矢先、原因菌が判明。
腸炎ビブリオである。
被害者から検出された型もすべて同じであることから、同一場所で口にしたもののようだ。

腸炎ビブリオは海水に生息する細菌が原因。
となれば、魚介類が疑わしいが、被害者の中には魚介類を口にしていない者も居るそうだ。
右京の目が怪しく光るが……。

そんな中、食中毒事件で遂に死亡者が1名出てしまう。
ハルカのことを思い出した甲斐は病院へ駆け付ける。
だが、ハルカの母は無事であった。
ほっと胸を撫で下ろす甲斐。

その頃、右京は「マルトクフーズ」を訪問していた。
「アプリティーボ」で使用される魚介類について調べる為だ。
こちらの担当者も増井であった。
増井による立入検査の結果はすべて異常なし。
そんな中、取扱品目に冷凍物が多いことに注目する右京。
右京は「冷凍ボイル海老を生食用と表記するのは誤解を招く恐れがあるのでは?」と指摘。
だが、担当者は「食品衛生法上、生食用と表示するのは問題ではない」と一蹴する。

米沢により、スープトップの部品の形状と岡谷の特徴的な傷が一致した。
やはり、岡谷はスープトップのある場所で殺害されたのだ。

同じ頃、「アプリティーボ」の阿部社長は「うちは原因じゃないって言ってるだろ!!」と取り囲む取材陣を一喝していたが……。

円を訪ねた右京。
右京はスープトップに問題が無かったのにも関わらずメンテに出した理由を問う。
円は「味が変わったように感じたんです……」と述べる。
さらに右京は円がスープトップを使用して作るメニューについて尋ねる。
円によれば「ミネストローネ」と「アプリティーボ特製ソース」だそうだが……。

続いて、浦川社長にスープトップについて質問する右京。
ところが、まさにその場にて日本から輸出した材料が税関を通らないことが判明。
思うようにいかず、いろいろと苦戦しているようだ。
だが、浦川は絶対にスープトップを輸出してみせると断言する。

アプリティーボから原因菌が検出できなかったことにより営業再開されることとなった。
右京は原因菌が含まれていたであろうメニュー特定に急ぐことに。

甲斐の勧めで、ハルカに事情を尋ねる右京。
ハルカによれば、その母は「楽しみにしていたのに味が変わった」と洩らしていたそうだ。
ハルカの母が楽しみにしていたのは「有機野菜の健康サラダ」だそうだが……。

これを聞いた右京の表情が凍り付く。
「大変です。アプリティーボの営業を止めなければ……」

右京と甲斐はアプリティーボの支店に駆け込むや、営業を差し止める。
彼らは食中毒の原因を突き止めたのだ。
そのメニューは……「アプリティーボ特製ソース」であった。

「アプリティーボ特製ソース」の原材料は「牛乳、ホタテ、玉ねぎ、酢、セロリ」。
カルパッチョやサラダにかけて食べるのだが、このホタテが原因だったのだ。

その日に届いたソースは、営業終了後にすべて破棄する。
この際、ソース容器も洗浄する。
だから、保健所が押収した容器からは原因菌が特定出来なかったのである。

さらに、右京は届けられた特製ソースが梱包されていた段ボールに注目するが……。

浦川社長を訪ねる右京。
食中毒の原因が「アプリティーボ特製ソース」にあることを伝えると、その原因がスープトップによるホタテの調理法にあったと指摘する。

スープトップによる加熱が甘かったのだ。
何故なら、加熱するヒーターが故障していたのである。
料理の味が変わったのはコレが理由であった。
ウラカワ機械では、上海側に技師を割いた為に人手不足に陥り十分なメンテを施せなかったのだ。
故障は見逃されていた……だから、食中毒に繋がった。
浦川社長は野望実現を目前に、水倉に連行されることに。

数時間後、円の前に右京と甲斐が立っていた。
感染源がスープトップで作られた特製ソースであったことを教える右京に、円は「うちは関係ない!!」の一点張りである。

だが、右京は此の食中毒事件の原因が「ウラカワ機械の機器の故障」だけではないことを明かす。
円が使用した食材にも問題があったのだ。
スープトップの機器から検出されたホタテはアプリティーボ指定の「生食用ホタテ」ではなく、より安価な「加熱用ホタテ」であった。

生食用ホタテならば、(既にボイル済みの為)余り熱を通すことなく食べられることが売りだ。
加熱時間が少なくとも安全性が高い。

だが、加熱用ホタテは適切に加熱しなければ食べられない。
ヒーターが故障した為に、適切な加熱時間を得られなかったのだ。
だから、腸炎ビブリオを排除し切れず食中毒に繋がった。

あの日、ソースの味が普段と違うことに違和感を抱いた円はスープトップを解体し調べていた。
其処へ岡谷が訪ねて来た。
岡谷は自社から出荷した生食用ホタテと加熱用ホタテの取引量の相関関係から円の欺瞞を見抜いた。
岡谷は円に詰め寄った。

だが、円は「今まで何も起こらなかったじゃないか」と相手にしない。
「生食用でないとあの味は出ないんです。それに契約違反ですよ!!」
岡谷は怒った。
見逃してくれと懇願する円だが、岡谷は信用問題に繋がりかねないと拒否。
揉み合う内に露出したスープトップの内部機器に岡谷が頭部を打ち付け死亡してしまった。
困った円は出荷用の段ボールに岡谷の死体を詰め、遺棄したのだ。

しかし、円は罪を認めようとしない。

仕方なく右京は証拠があることを指摘する。
サラダオイルと段ボール箱内側の樹脂が合致した。
何より、円はもっとも大きなミスを犯していた。
現場に靴跡を残していたのだ。
もはや、逃れる術はない。
円は岡谷殺害と食中毒事件について罪を認め、逮捕される。

その夜、花の里にて。
酒を酌み交わす右京と甲斐、それを見守る幸子の姿があった。

「ウラカワ機械」が適切にメンテナンスを施し、機器の故障に気付いていれば……。
「ミヤ食品加工」が適切な食材を使用し、殺菌時間不足でなければ……。
「アプリティーボ」が食品を扱う重要性を理解し、保健所からの検査を断らなければ……。
事件解決の喜びとは裏腹に、遣る瀬無い甲斐。

これを聞いた幸子は「一番大切なのはお客様なのに……」と呟く。

甲斐に電話が入った、ハルカからだ。

何かあったのか……緊張する甲斐。
だが、電話を受けると表情が和らぐ。
ハルカの母が意識を回復したらしい。
微笑みを浮かべる甲斐、そんな甲斐を横目に薄く笑う右京―――3話了。

<感想>

シーズン12(twelve)3話。
脚本は櫻井武晴さん。

サブタイトルは「原因菌」。
原因菌と耳にして、谷原章介さん演ずるデンターシステマの宣伝(歯周病菌の原因菌は……のアレ)を思い出した管理人です。
それくらい意外と耳慣れない言葉ですね。

それは置いといて。

サブタイトル通り、直接的な食中毒の原因は菌にあるのですが、それを招いたのは人の心だった。
自分じゃなくても誰かがやるだろう……利益を追求した結果それぞれの無責任が大事件に発展したワケですね。
これは飲食業だけに限らずどんなことにも当てはまるでしょう。
現に機械業者の浦川もその1人でした。
何時の世も「人に影響する大きな要素は人」となるのでしょう。
場合によっては、昨日の自分の怠慢が明日の自分を殺すかもしれないのです。
戒めねばなりません。

構成的にも優れていたように思えます。
バラバラの事件が1つに重なる―――これこそ、ミステリの醍醐味の1つ。
特に食中毒事件の3つの原因の1つこそが、殺人の動機に繋がる点はロジックとして美しかった。
右京と甲斐が互いに尊重し合っていたのも良かった。
甲斐も相棒らしい活躍してましたし。

さらに、今まさに問題となっている誤表記に近いものも登場していましたね。
「生食用」と表記があるものの、消費者のイメージするソレとは異なり、既にボイル済みであり菌が規定値以下であれば名付けられるというルール。
消費者としては「それは違うような……」と叫びだしたくなります。
ただ実務上、何処かで線を引く必要があるのでしょうが……。

キャラ的には、生活環境課の水倉がインパクトがあって良かった。
是非、準レギュラー化して欲しい逸材です。