OKASHINAKUNのブログ

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相棒12 6話「右京の腕時計」

【 相棒12 】(相棒 season12)の第6話は「右京の腕時計」です。これは純粋にミステリーとして面白かったです。人情話も悪くないけど、やっぱりミステリーはこうでなくちゃね。
展開としてはコロンボ形式(最初に犯人が分かってしまう)に近かったですが、そこへ持っていくまでの動機とひねりがよかったですよね。やはり、最初から最後まで、全部まるっとクリアにお見通しでは物足りませんから。以下、ネタバレです。

 

■事件概要
今回の被害者は藤井守(井上純一さん)という時計の輸入販売会社の社長でした。最初は自殺と見られておりましたが、右京さんレーダーに引っかかり、何者かに殺害されたことが次第に明らかになっていきます。
犯人はずばり、この会社=藤東物産の修理部門に在籍する津田陽一(篠田三郎さん)。それはすぐに分かりましたよね~。というか篠田三郎さんが演じてる時点で犯人と分かった人もいたでしょうね...。
世界に通用する時計技師の津田に、たまたま時計の修理を依頼した右京さんがその工房を訪ねた際、その話の最中に時計が4時の時を告げると、津田はじっとその時計を睨むように眺めていました。あの時報で時計の故障に気づいたとでもいうなら話は別ですが、そうでなければあの見つめ方は尋常ではありません。
あそこで「この津田が犯人に違いない」、そう思った方は多かったと思います。右京さんも、時計一筋の職人が、部品に触っている時に、時報に気を取られるのはあり得ない、そう違和感を抱いていたようでした。

 

■事件の流れ
動機の解明に行く前に、ここでまず、右京さんたちが明かした藤井が殺された経緯を簡単にまとめておきまする。

右京さんは、伊丹たちが自殺と断定したその現場のエアコンが、死亡推定時刻と思われる4時から10分間だけ作動するようセットしてあったことに気づきました。しかも、エアコンの羽根は、暖房を入れる時期にもかかわらず上を向いていたのです。

藤井は花瓶に入れられた硫化水素(H2S)の毒ガスを吸い込んで亡くなっていたのですが、ちょうどその花瓶が置かれていた上にはライトがあり、そのライトの上にエアコンの風が当たるようになっていました。つまり、犯人はこのライトの上に硫黄(S)をオブラートに包んで置いておき、エアコンのタイマーが作動した4時に風を受けて下の花瓶の水(H2O)の中に落ちるよう仕掛けをしておいたのです。

 

■殺人の動機
さていよいよ動機解明に移りましょう。いったいなぜ津田は藤井を殺したのか。しかも藤井は津田の命の恩人だというのに?

なんでも津田は昔妻を強盗に襲われて亡くしているのだそうです。当時は独立時計師という自分一人で一から時計を作る職人になることを夢見ていた津田は、唯一の理解者だった妻に死なれて絶望し、時計職人への夢をすっかり諦めて後追い自殺も考えていたそうです。

が、その頃自分の会社の修理部門に津田を引き抜こうと日参していた藤井が、何とか彼を説得して今の職に就いたのだとか。

ここで1つの大きなヒントとなったのが殺害現場でした。藤井が亡くなっていたのは、津田を引き抜いて独自のブランドを立ち上げようと藤東物産の買収を図っていた関一馬の別荘だったのです。

角田課長も指摘していたように、どう考えても自分の別荘でわざわざ「敵」を殺すとは思えないことから、ここには何かアクシデントがあったに違いないと考えるのが普通ですよね。

津田は本来、藤井ではなく関を殺そうとしていたのに、何らかの手違いがあって藤井を殺してしまったのではないか?そう思っていたのですが、これまた見事に裏切られてしまいました。

 

■18年前の事件の真相

なんとですね~藤井は津田の妻を殺した仇だったのです。

津田は、恩人である藤井に頼まれて関殺しに協力するため、藤井の車で関の別荘へ行き、前述した仕掛けをしたのですが、その後、藤井に車を返しに行った際にある物を見つけたそうです。それが、昔津田が妻のために作っていたという時計の部品でした。そのぜんまいは津田の手作りだったのだそうです。

世界にたった一つしかないオリジナル時計の部品がなぜ藤井のガレージにあったのか、

答えはたった1つしかありません。妻を殺した時に、犯人が「強盗」を装って、その時計を壊していたからです。(津田の工房だった場所を藤井が使っていたということでしょう。)実際には津田を引き抜きたいがための懇願が過ぎての過失致死(事故)だったようですが、もし津田が事実を知ったら決して引き抜けないと分かっていた藤井がこれを強盗の仕業に見せかけたのでしょう。

これに気づいた津田はでも最後にこう藤井に確認したそうです。昔作ったオリジナル時計を修理したいが、自分が仕掛けたオルゴールの曲名を忘れてしまった。あの頃いつも家に来ていた社長なら覚えているだろう?

津田はそのオルゴールを、年に1度だけ~妻との結婚記念日に鳴るよう仕掛けをしていたそうです。それは妻が殺害された日でもあった。それを藤井は見事にこう言い当ててしまうのです。「それは「カノン」だろう?」と。

こうして津田は藤井の妻殺害を確信し、関ではなく藤井を殺そうと決意したのです。借りた車の鍵のキーホルダーを落として壊してしまった。あの別荘でのことに違いない。

これを聞いて慌てた藤井は引き続き津田に捜しに行くよう命じましたが、津田はこの時、殺害予定時刻のぴたり4時に右京さんが訪ねてくることになっていたため(実際には早めでしたが)、客の刑事が来るから行けないと断ります。

大丈夫、3時半には管理人が帰宅するから、それから4時までの間に回収すれば間に合う。

そして津田は、藤井から預かっていたという時計を返し、修理が済んだと嘘をつきました。本当は、藤井が時間を間違えるよう、3時間できっちり20分ずれるよう細工しておいたのです。

藤井は3時半過ぎに別荘に忍び込んだつもりだったのが、実際には4時直前であり、床に這いつくばって「捜し物」をしている間にその4時が来てしまったというカラクリです。現場に残されていた、いくつかの不自然な指紋~床についていた両手の跡も、これを物語っておりました。それに遺留品の中にあった壊れたキーホルダーも。

同じく遺留品にあった手帳に、関がいつ別荘に滞在しているかを記してあったのも大きな手掛かりですよね。最近あまり目立たない(お疲れか?)米沢さんがこれを見事に「不在時を調べていた」と視聴者を自殺説へとミスリードしたのも演出的にはお見事でした。先入観とは実に恐ろしいものです。

 

■『右京の○○』シリーズ

相棒では『右京の○○』という、右京さんが使っているものを作る職人が出てくるエピソードがあります。が、職人たちは皆何らかの犯罪を犯し、逮捕されてしまいます...。皆同情の余地がある事件ばかりなのですが。