OKASHINAKUNのブログ

ドラマ感想と、日常と、時々ボクシング

映画「臨場」

 ドラマ「臨場」(2009年、2010年)の映画化作品です。最近はドラマの映画化が目立つが、私のようにドラマを見ていない者もいかに映画に引き込むかが課題だろう。劇場版『臨場』は、映画だけでも話が完結しているので、ドラマを見ていない人も楽しめたでしょう。もちろん、ドラマを見ていた方が登場人物の背景が分かって面白いだろうが。

まず、冒頭の無差別通り魔事件の凄惨さに涙がこぼれる。赤ん坊をかばって刺殺された母親が可哀そうだった。さらに、それを見て「やめて!」と叫んだ娘も犠牲になるのは惨過ぎる。最近は無差別通り魔事件が多く、映画とは言え実際の事件のように思えた。

現行犯逮捕といえども、刺し傷が犯人によるものかどうか確定するために、あれほどまで事細かに検視するとは感心した。罪もないのに殺された人々は無念だったろう。「物言わぬ使者の声を聴くのが監視検視官の使命」で、死者の無念を晴らすために、丹念に証拠を集める倉石の目の鋭さに脱帽した。その丹念な検視で、ズボンのシミから死亡推定時刻の偽装を見破ったのはさすがである(ひょっとしたら、犯人が神奈川で起こした精神科医殺害事件で行った死亡推定時刻の偽装を、港区の弁護士殺害事件でも行っていたら、完全犯罪になっていた?)。また、神奈川と港区の事件が、傷口の数や場所が似ていることから、同一犯の犯行と推理したのもさすがである。推理ドラマとしても面白い。ただ、意外な犯人であるが、犯行の動機としては弱い気がするが。

この映画では、今回は心神喪失詐病も問題になっている。実際の裁判では弁護側だけではなく、検事側の精神関係も証拠として用いられるので、そう簡単に詐病はできないと思う。しかし、もし詐病で刑を軽くしたいという犯人がいれば、絶対に許されない。

何の罪もない娘が殺されたのに、犯人が無罪になるのは不条理であるという、美香の母親の気持ちも良く分かる。葬儀場での美香の母親が倉石に思いをぶつける場面の長回しの場面は、すごい迫力であった。最後、娘が生きていた証を母親が街で見つけるシーンでは、母親の気持ちが良くわかり、涙が止まらなかった。
また、映画では神奈川県警の仲根管理官が刑事時代に行った強引な自白強要が冤罪につながった。冤罪によって息子を失った浦部巡査も無念だったろう。現実でも、強引な捜査によるえん罪が問題になっている。これも許してはならない。ただ、浦部巡査が波多野を襲う場面は必要だったの?

具合が悪そうだった倉石が電話に出ない場面で映画が終わり、倉石がどうしたのか気になる。重いテーマであるが、見ごたえのある映画だった。